クリスティーヌ・ラガルドIMF専務理事の発言が大きな議論を呼んでいます。彼女は公の場で「銀行業は終わりを迎え、暗号通貨が勝利する」と言ったのです。(『カレイドスコープのメルマガ』)
※本記事は、『カレイドスコープのメルマガ』 2017年10月19日第228号パート1の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
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「中央銀行システムはブロックチェーンによって大きく変貌する」
ラガルドIMF専務理事の発言が波紋
ここのところ、国際通貨基金(IMF)が、仮想通貨(暗号通貨)に関するコメントを連発するようになりました。
特に、IMF専務理事のクリスティーヌ・ラガルドが、最近、国際会議で発したコメントは、世界中の銀行家の間で大きな議論を呼んでいます。
彼女は、「銀行業は終わりを迎え、暗号通貨が勝利する」と、公の場で本当に言ったのです。
ラガルドは、9月末にロンドンで行われたイングランド銀行のフォーラムで、「暗号通貨は、インターネットと同じくらい世界を大きく変えるだろう。それは、各国の中央銀行や従来の銀行業を別のものに置き換え、国家が独占している通貨システムに挑戦する可能性を切り開くものとなる」と述べました。
さらに、「暗号通貨をめぐるさまざまな混乱や懸念があるが、それも時間が経てば落ち着くはずだ。長期的には、技術そのものによって、国家通貨の在り方や従来の金融仲介業務が暗号通貨によって置き換えられ、今日のような“部分的な”銀行業務に疑問が投げかけられることになるだろう」と付け加えました。
要するに、従来の銀行業務がドラスティクな変化を遂げ、グローバルで広範な金融サービスに生まれ変わると言いたいのです。当然、ラガルドの言う変化が進むと、銀行そのものが不要となり、銀行員という職種も世の中から消えてしまうことを意味するのです。
残念ながら、この点においてだけは私も同意せざるを得ません。
「IMFのSDRがビットコイン化する日」
これを10月6日付のウォール・ストリート・ジャーナルは、「IMFのSDRがビットコイン化する日」と題して報じていますが、この見出しには、ビットコインが崩壊しないようにとの配慮のあとがうかがえます。
ウォール・ストリート・ジャーナルのこの見出しは、明らかに、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOによる「ビットコインは詐欺」発言を穏やかに批判するもので、ラガルドのこのコメントを受けて、ビットコインの価格は10月12日の最高値66万円へ向けて駆け上がっていきました。
ただし、ラガルドはビットコインについては具体的に触れていません。
以前のラガルドは、むしろ、ブロックチェーン(分散化台帳技術)と暗号通貨の将来に悲観的な見通しを示しており、ジェイミー・ダイモンCEOと同じようなコメントを出すかもしれないと、暗号通貨の関係者をハラハラさせていた人物です。
彼女がブロックチェーンと暗号通貨について180度見方を変えたのは、2016年初めに発表した小論文がきっかけとなりました。
彼女は、世界経済フォーラムで発表した42ページの報告書の「暗号通貨の概要」の中で、ブロックチェーンと暗号通貨を称賛しまくっているのです。
いったい、何がラガルドの態度を一変させたのでしょう?
彼女が平然と前言を翻したことは、IMFが、SDR(特別引出権)をデジタル通貨に置き換えることを決定した証左とも捉えることができます。
これは、中央銀行システムを西側世界に押し付け、政府の債務証券(その国の紙幣=フィアット通貨)を印刷しまくって国民から富を吸い上げてきた世界主義の国際銀行家たちが、近い将来、独自のデジタル通貨を発行することによって、いよいよ世界統一通貨への具体的ステップを踏み出そうとしている明確な意思表示に違いないのです。
元祖ビットコインが表舞台から姿を消す?
SDR(特別引出権)がデジタル通貨(仮想通貨)に置き換えられる背景とプロセスについては、やや複雑なので、10/23日配信のメルマガパート2で詳述しますが、まず先にビットコインの現況とごく近い将来について書いておきたいと思います。
ビットコインには、目先に大きなイベントが2つほど控えています。
ひとつは10月25日のハードフォーク、もうひとつは、まだ100%確定とは言えないものの、11月19日に予定されているセグウィット2x(SegWit2x)による本家本元のビットコインの分岐です。
なぜ、10月25日なのかというと、ひとつの節目であるビットコインのブロック生成高が491407になるときが、2017年10月25日の見込みだからです。
10月25日のハードフォークでは、元祖ビットコイン(Bitcoin)から、ビットコイン・ゴールド(Bitcoin Gold)が誕生します。
ただし、「ゴールド」と言っても、金(ゴールド)でその価値が裏付けられているというわけではありません。
10月25日の時点で、元祖ビットコイン(Bitcoin)ホルダーには、分岐した結果、生成されるビットコイン・ゴールド(Bitcoin Gold)が自動的に付与されることになっています。
そして、11月19日に予定されているセグウィット2x(SegWit2x)にともなう分岐では、「B2X」(仮称)という元祖ビットコインの分身が誕生します。これらを表にまとめると以下のようになります。
元祖ビットコインに加えて8月のハードフォークで分岐・生成されたビットコイン・キャッシュ(Bitcoin Cash)、そして、10月25日のビットコイン・ゴールド(Bitcoin Gold)、そして11月19日に分岐・生成されることになっているB2Xと、これで、ビットコイン兄弟は4つになり、発行上限コイン数も、それぞれ2100万コインとなっています。
しかし、ビットコイン・ゴールド(Bitcoin Gold)の付与については、若干の条件が付けられています。
それは、「全ユーザーの取引状況から算出される付与係数を乗じた数量を付与する」とのことで、ブロックが安定的に生成されるだけのマイナーが集まらなかった場合(将来、見込まれる取引数が極端に少ない場合)は、上の表にあるように2100万コインではなく、もっと少なくなるということです。
仮想通貨の価値を決めるのはマイナーの発掘状況なので、ビットコイン・ゴールド(Bitcoin Gold)については、分岐後、自動的に付与されるといっても、どの程度の値が付くのか不透明です。
したがって、10月25日のハードフォーク後、元祖ビットコインのホルダーに対してビットコイン・ゴールド(Bitcoin Gold)を付与するかどうかは、日本仮想通貨事業者協会の告知のとおり、各仮想通貨事業者の判断に任せられることになりました。
日本法人の仮想通貨取引所は、「マイナーが十分に集まらず、ブロックが安定的に生成されない場合、そして、何らかの脆弱性が発覚しそれに対する対策が行われない場合にはビットコイン・ゴールドは付与されない場合もある」と、口座を開設している仮想通貨投資家たちに事前通告していますが、それでも、ビットコイン・ゴールドの獲得を目的としてビットコインひとりに買いが集中しています。
すでに、完全にバクチ化しているのが仮想通貨界隈です。
セグウィット2x(SegWit2x)にマイナーの9割以上が賛成
これに対して、11月19日に予定されているセグウィット2x(SegWit2x)に伴う「B2X」は、あらかじめ、マイナーの9割以上が賛成しているので、活発なマイニングが行われることは約束されていると言えます。
つまり、元祖ビットコインは消滅することはないにしても、その性能が時代遅れとなったり、マイナーの費用対効果が合わなくなったりで、元祖ビットコインの実需はB2Xに引き継がれると考えられているのです。
その結果、多くのビットコイン・ユーザーの間で、分岐・生成されるB2Xが、必然的に元祖ビットコインを潰しにかかるのではという懸念が日増しに強くなっているのです。
もし、そのとおりに事態が推移していけば、今回は8月のハードフォークのときと違って、元祖ビットコインにとっては、休眠状態を余儀なくされる事態に発展するかもしれません。
「元祖ビットコインは今後サポートしない」
すでに仮想通貨事業者の中には、「オリジナルのビットコインは、今後サポートしない」と明言する業者も出てきました。
アトランタにあるビットコインATMを提供するCoinfucius(コインフューシャス)などは、「11月の潜在的分岐後に生じるアルトコインのB2Xを本流の”ビットコイン”とし、現在の1MBブロックのオリジナル・ビットコインはサポートしない」とツイッターで宣言しました。
B2Xは、元祖ビットコインから見れば、ビットコイン・キャッシュと同様、アルトコイン(代替通貨)になるわけですが、11月19日の分岐後は、こちらがビットコインの本流、つまり「本物のビットコインになる」とコインフューシャスは言っているのです。
大手ビットコイン取引所「BITFINEX」は、すでにB2Xの先物(11月19日が来たとき、その時点でのビットコイン保有者に自動的に付与されるB2Xの引換券のようなもの=トークン)を取り扱っています。
B2Xは、まだ影も形もないにもかかわらず、一時は30万円台まで上昇し、現在は1100ドル(約12万円)前後で推移しています。
元祖ビットコインに「事実上消滅」の恐れ
もちろん、元祖ビットコインの今までのハッシュレートが、新しく生成されるB2Xに移動されても、過去のトランザクション・データが消滅するわけではないので、B2Xの誕生によって、元祖ビットコイン、ビットコイン・キャッシュ、ビットコイン・ゴールドの3つが消えてしまうということではありません。
しかし、ほとんどのマイナーがB2Xに移ってしまうので、その分、ブロックの生成時間が余計にかかることになり、トランザクションが混み合ってくると、その履行にどれほどの時間がかかるのか不透明になってきます。
つまり、先々は、元祖ビットコインのユーザビリティが極端に劣ることにより、存在はしているものの、事実上の消滅状態となりかねないのです。
世界中のマイナーのほとんどが、ビットコイン4兄弟のメインチェーンがB2Xになると考えている以上、他の3兄弟は元祖ビットコインを筆頭に蛇の抜け殻状態となる可能性も出てくるわけで、最悪のケースでは、元祖ビットコインの価格が大暴落する蓋然性が非常に高くなるということなのです。
当初、ビットコインの発行限度数量は2100万コインと決められていたことから、その希少価値も相まってビットコイン信仰が生まれました。
しかし、ハードフォークを何度も繰り返すごとに、元祖ビットコインから派生した同数のアルトコインが付与されることによって、8月のハードフォーク以来、たった3ヵ月で最大2100万コイン×4=8400万コインが仮想通貨市場を徘徊することとなるのです。
「ビットコインは非中央集権型の暗号通貨であるがゆえに、どの政府も規制できず、国際銀行家の中央銀行システムへの挑戦になる」と多くの人が期待を寄せていただけに、10月、11月の二度にわたる分岐の結果は、多くのユーザーの落胆を誘い込むことになりそうです。
中央集権化が進む仮想通貨市場
9月に中国と韓国が、仮想通貨を使ったクラウド・ファンディング「ICO」を全面的に禁止し、さらに、中国がビットコインの取り扱いそのものを禁止する前まで、マイニングの7割が中国で行われていました。
中国のマイニング企業が、ビットコインを事実上、支配することになっていた時点で、ビットコインは中央集権化に移行しており、開発当初の理念は喪失してしまったのです。
まさに、「ビットコインをもっと独占したい、もっと主導権を握って自由に価格を操りたい」という群雄割拠の下剋上状態が現出していたのです。
ビットコインの開発者と言われている「サトシ・ナカモト」という匿名のグループは、当初、2100万コインの半分を保有していたと言われていますが、おそらく、その多くを売り払っているでしょう。
ビットコインの元開発者のひとり、マイク・ハーンは、「(仮想通貨の)実験は失敗だった」と表明し、所有していたビットコインをすべて処分してしまいました。
「日本vs.中国」主導権争いの陰で
代わって台頭してきたのがロシアで、この8月に国策としてビットコインのマイニングを行うと表明しました。
翌月には、日本のGMOインターネットが、北欧のある国にマイニング専用施設を建設し、早ければ2018年4月からビットコインのマイニング事業をスタートさせると発表しました。建物とコンピュータへの投資額は約100億円で、まさに社運をかけた挑戦です。
その他、SBIやマネックスなどの大手金融事業者、そして新興企業のDMMなども「中国一国主導のビットコイン・マイニングへの挑戦」とばかり、マイニング事業への参画を匂わせています。
中でも、SBIなどは、すでに電気代の安い北欧の国でマイニングをスタートしているとの情報も流れています。
しかし仮に、日本企業が中国勢に代わって、ビットコインの主導権争いを制したとしても、ビットコインの非中央集権の自由性を取り戻すことはできません。
イーサリアム、リップルをはじめとして、ほとんどのアルトコインが、明確な管理主体による中央集権によって秩序が維持されていることから、今後、理想に燃えていたコア開発者たちも、「中央集権型管理も、特に悪いということではない」と考え方を徐々に変えていくでしょう。
IMFラガルド「デジタル通貨に大黒乱が起こる」の真意は?
むしろ、ビットコインの開発者である「サトシ・ナカモト」グループの真の狙いは、ここにあったのかも知れません。つまり、通貨においても「企業による支配体制=コーポレートクラシー」を実現しようという……。
国際機関とはいえ、単なる民間の一組織に過ぎないIMFが、まるで時宜を得たかのように、暗号通貨の普及を促すような発言を繰り返すようになったのも、SDRを暗号通貨に置き換えることによって、「世界統一デジタル通貨」の発行を目論んでいると考える以外にないのです。
その前に、IMFのクリスティーヌ・ラガルドが、CNBC(10月13日付)のインタビューに応えて、「デジタル通貨に、いよいよ重大な大混乱が起こるかもしれない」と言ったように、仮想通貨市場が“雨降って地固まる”までには、もうひと波乱もふた波乱もありそうです。
11月19日のB2Xの分岐・生成によって、オリジナルのビットコインが消滅の危機に晒されるのも、その1つなのでしょう。
しかし、ラガルドは楽しそうに見えます。
それは、「世界統一通貨がいよいよ現実のものとなる」という高揚感からきているようです。彼女は、こうした波乱の向こう側に広がっている風景を見ているのでしょう――
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日銀と政府は法定デジタル通貨の発行について言及していないものの…
ブロックチェーンによって国民の購買履歴や資産の移動状況をすべて把握したい政府
IMFはすでに204ヵ国から「国際通貨のリセット」について合意を得ている
※本記事は、『カレイドスコープのメルマガ』 2017年10月19日第228号パート1の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した全文や、23日に配信された本記事の続編(メルマガ最新号「SDRの暗号通貨化を計画するIMFと表舞台から姿を消すビットコインその2)もすぐ読めます。
参照元:http://www.mag2.com/p/money/321832