代表的な仮想通貨ビットコインの価格下落が加速している。日本時間22日に一時1万3000ドルを割り、5日前につけた最高値からの下落率は3割を超えた。韓国では北朝鮮による取引所に対するサイバー攻撃の脅威が高まっている。世界の中央銀行などから価格高騰のリスクを警告する発言も相次ぎ、利益確定売りが膨らんでいる。借入金を活用した高リスクの証拠金取引では強制売却が増えており、価格の下げを増幅している。
米情報サイトのコインデスクによると、1ビットコインの価格は日本時間22日午後10時すぎに一時1万2500ドルを下回った。1日の下落率は2割を超え、約2週間ぶりの安値をつけた。17日に1万9783ドルの最高値を記録した後は下落基調が続き、最高値からの下落率は3割を超えた。
ビットコインの現物価格の急落は、12月に米国市場で始まった先物取引にも影響が及んだ。
日本時間18日に取引を始めたシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)では期近の2018年1月物は前日清算値より2475ドル安い1万2855ドルまで下落。急激な価格変動を抑えるサーキットブレーカーが発動し、取引が一時中断した。
12月中旬までの急激な価格上昇でビットコイン相場はバブルの様相をみせていた。年初からの上昇率は約20倍に達し、2000年前後のIT(情報技術)バブル時のハイテク株をはるかに上回る上昇幅と上昇スピードを記録していた。
ビットコインバブルは米株式市場にも波及。米飲料会社ロングアイランド・アイストティーは21日、ビットコインを支える技術の名称を社名に加えて「ロング・ブロックチェーン」に変更。投機マネーが同社株を買い上げ、株価が一時前日比4倍近くに急騰する「珍事」も起きた。
投機に沸いたビットコイン相場が今週に入り調整色を強めているのは、韓国で再認識されている北朝鮮のサイバー攻撃の脅威に加え、世界の中銀や金融当局のトップから価格高騰へのけん制発言が相次いでいるためだ。
日銀の黒田東彦総裁が21日の記者会見でビットコインの上昇について「異常な高騰」と警鐘を鳴らしたほか、米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長も同様の発言をしている。
金融規制当局も徐々に厳しい視線を向けはじめており、英金融行為監督機構(FCA)のベイリー長官は先週「ビットコインの投資家はすべてを失う危険を覚悟すべきだ」と言い切った。
需給構造のもろさも下落を増幅している。世界で4割の取引シェアを握る日本では、借入金を活用して元手を上回る取引ができる証拠金(レバレッジ)取引を使う個人も多い。中には差し入れた証拠金の最大25倍の取引を許す取引所もある。
投資家が証拠金倍率25倍でビットコインを買った場合、時価が購入価格を4%下回ると追加証拠金(追証)を差し入れない限り取引所がビットコインを強制売却する。「証拠金取引の強制決済が相次ぎ、価格下落がきつくなった」(フィスコデジタルアセットグループの田代昌之氏)との指摘が出ている。
参照元:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO24975170S7A221C1EA2000/