麻生太郎財務相が9日、2024年度の上期に紙幣を刷新すると発表した。新紙幣は04年以来、20年ぶりとなる。政府・日銀による戦後の紙幣刷新の歴史を振り返ると、約20年ごとに主要な紙幣の図柄を一新してきたことがわかる。

終戦直後の1946年に1円、5円、10円、100円の紙幣を発行すると、急速な物価上昇を受けて58年に聖徳太子を図柄にした1万円札が登場。63年には千円札の図柄も伊藤博文に変わった。

それから約20年後の84年には千円札を夏目漱石、5千円札を新渡戸稲造、1万円札を福沢諭吉に刷新。さらに20年後の2004年には千円札を野口英世、5千円札を樋口一葉、1万円札を福沢諭吉とした現行紙幣の流通が始まった。2000年に発行を始めた2千円札を除けば、主要紙幣では約20年の周期での切り替えが目立つ。

なぜ刷新するのか。これまでの刷新時には偽造防止が大きな理由にあげられた。紙幣は政府・日銀の信用のもとで発行・流通させており、偽造紙幣の流通は経済を混乱させかねないからだ。

偽造グループなどの技術向上に対抗するには、できる限り高度な印刷技術を採用する必要がある。一方で短期間でたびたび図柄を変更すれば、消費者や企業に負担が生じる。偽造防止と利用者の利便性の間をとる形で、20年程度の周期が目安となってきたようだ。

新紙幣への切り替えには、企業がATMや両替機、自動販売機などを更新する必要がある。こうした機器の開発・生産や普及には時間がかかるため、政府は準備期間を確保できる時期に刷新方針を発表してきた。04年の際は02年に刷新すると発表した。今回も政府・日銀は数年後から発行を始める方針を公表する見通しだ。

ATMなどの交換や改造にかかるコストは大きい。これが経済効果を生むとの期待がかつてはあった。今回もそうした効果を狙った側面もありそうだが、金融機関のコスト意識は高まっている。キャッシュレス化が進むきっかけになる可能性もある。

参照元:
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO43505980Z00C19A4I00000?unlock=1&s=2

紙幣刷新、約20年ごとに 偽造防止が大きな狙い